特例の概要
相続税や贈与税は特例措置が設けられていることがあり、その活用によっては大幅に税負担を軽減できる可能性があります。金額次第では税負担がゼロとなることも珍しくありません。
しかし、こうした特例を使うためには期限内に申告を行うことが要件となっていることも多く、何もしなくても特例の適用が受けられるとは限りません。申告がなされないと、その後に気づいたとしても特例が受けられない可能性が高いため、慎重な対応が必要となります。
また、相続税の特例のうち効果が高いと見込まれる小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減については、遺産分割が行われている必要があります。争い等により申告期限までに遺産分割がなされていない場合には、当初申告においては特例の適用がないものとして計算した相続税額を一旦納付し、後日、遺産分割が行われてから納め過ぎた税金の還付を申請することとなります。ただ、この還付を行う手続も当初の申告時に「期限後3年以内の分割見込書」等の書面を併せて提出し、また還付手続を行える期限も決まっているため、注意しなければいけません。
相続税でよく活用される特例
①小規模宅地等の特例
一定の要件を満たす事業用や居住用の宅地等につき、最大で80%評価を減額する特例
②配偶者の税額軽減
配偶者が取得した財産につき、法定相続分または1億6千万円までのいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない特例
- 例1)遺産額4億円、法定相続人が配偶者と子1名の場合、法定相続分である2億円を配偶者が相続しても、当該配偶者に係る相続税は免除される
- 例2)遺産額1億円、法定相続人が配偶者と子1名の場合、(法定相続分を超える)1億円すべてを配偶者が相続しても、当該配偶者に係る相続税は免除される
③保険金の非課税枠
死亡保険金につき、500万円×法定相続人数までは相続税を非課税とする制度
- 例)死亡保険金2千万円に対して、法定相続人が3人いる場合には、500万円(2千万円ー500万円×3人)のみ遺産額として課税される
④死亡退職金の非課税枠
死亡退職金につき、500万円×法定相続人数までは相続税を非課税とする制度
- 例)死亡後に会社から支給された退職金が3千万円あり、法定相続人が4人いる場合には、1千万円(3千万円ー500万円×4人)のみ遺産額として課税される
贈与税でよく活用される特例
①贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又はその取得するための金銭の贈与は、基礎控除110万円のほかに2,000万円まで非課税となる特例
②教育資金の一括贈与の非課税(時限措置)
30歳未満の子や孫がその直系尊属から教育資金のため受けた贈与は最大1,500万円まで非課税となる特例(令和8年3月31日までの贈与)
令和5年の税制改正により、一部改正がなされているので、適用時に留意
③住宅取得資金の贈与税の非課税(時限措置)
20歳以上の一定の方が直系尊属から自己の居住の用に供する住宅の新築等の取得資金の贈与を受けた場合には、一定の金額まで非課税となる特例