オリオン税理士法人
法人税

既存建物の取り壊し費用の取り扱い


(1)はじめに

不動産賃貸オーナーが自己の所有するアパートなどを建て替える際の取り壊し費用の取り扱いについてご説明いたします。なお、本件は取引金額が大きく、近年、消費税法上の大きな改正が入ったため、税務調査でも指摘が多い分野です。一般的には以下の取り扱いで問題ないと思いますが、個別の事情に合わせて慎重にご判断下さい。


(2)法人税法上の取り扱い

取り壊し費用は全額支出年度の損金に算入可能と思われます。

建物を取り壊す前提で購入した土地建物の場合、建物の残存帳簿価額と取壊費用の合計額は土地の取得費に算入する(法基通7-3-6)という解説をご覧になった方は多いと思います。

一方、以前から所有する土地建物について、建物を建て替える場合には、法基通7-7-1が適用されます。

法基通7-7-1では取り壊し費用の取り扱いについて明文化されていませんが、法基通7-3-6では、建物の取得費及び取り壊し費用が土地の取得費になると記載があります。法基通7-7-1は法基通7-3-6を補完する性格を有していますので、取り壊し費用についても建物の残存価額と同様に全額損金算入可能であるものと考えます。


(3)消費税法上の取り扱い

高額特定資産には該当せず、居住用賃貸物件の控除制限はないと思われます。

居住用賃貸建物(高額特定資産)に係る課税仕入等の税額は、仕入税額控除が認められなくなりました。そのため、居住用賃貸建物を建設する際には高額特定資産の該当可否を判断する必要があります。

高額特定資産とは、その建物等に要した課税仕入れに係る原材料及び経費に係る税抜支払対価の額の合計額が1,000万円以上であるものとされています。ただし、土地の造成費や改良費などは対象外とされており、法基通7-3-6に照らせば、取り壊し費用も左記支出と同様の取り扱いになると思われます。

また、法人税法上で一時の損金性が認められている=資産性がないことから、高額特定資産となる余地はないため、仕入税額控除が認められるものと考えます。



(Hipon)

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