法人税法と租税特別措置法においては、固定資産を補助金により取得した場合や、買換え・収用等により取得した場合に、圧縮記帳によって一定の金額を損金に算入させることができます。
このとき法人側では、
A、直接固定資産の帳簿価額を減額する方法
B、剰余金処分により積立金として積み立てる方法
の2つの会計処理を選ぶことができます。
法人税上では上記いずれの方法を採用したとしても税額に変わりはありませんが、相続税法上の株価の算定においては気を付けたい点があります。
①会社規模の判定
AとBの会計処理の違いによって、会社規模の判定で用いる総資産価額の金額が変わります。
Bの方法で会計処理をした場合には、積み立てた金額を固定資産の価額から控除しないため、総資産価額が大きく判定されます。
その結果、類似業種比準価額が加味される割合が増えることになります。
➁純資産価額の資産の帳簿価額について
Bによる会計処理を行った場合でも、積立金の金額を固定資産の帳簿価額から控除をします。
①とは積立金の取扱いが異なることとなります。
一方、AとBのいずれの会計処理であったとしても圧縮記帳の調整が行われるため、計算結果に違いはありません。
③課税時期前3年以内に取得した場合について
AとBのいずれの会計処理であったとしても「通常の取引価額」にて評価をします。
圧縮記帳の影響が加味されないため、計算結果に違いはありません。
④土地保有特定会社の判定について
土地保有特定会社の判定は、
【相続税評価額での土地等の価額】÷【相続税評価額の合計額】
の計算結果にて行います。
財産評価基本通達にしたがって計算をするため、計算結果に違いはありません。
以上より、圧縮記帳の経理処理の違いによって影響を受けるのは会社規模の判定のみですが、圧縮積立金部分を控除する箇所としない箇所があるため注意が必要です。
また、一般的に類似業種比準価額を使用する割合が大きければ株価は下がりますので、特定の評価会社または明らかに小会社に該当する法人以外においては、Bの方法を用いたほうがよさそうです。
y.s