オリオン税理士法人
相続税

税務上の贈与の時期について


よく「贈与の時期」について質問される場合があります。

例えば、「不動産を贈与していたけれど、実際に贈与税の申告や登記は実施していなかったのですが10年程度経過したのち登記すると、贈与税はどのような取り扱いになりますか?」などの、質問を受けます。

これに対する、規定として下記の相続税法基本通達があります。

民法上、贈与は無償によりある財産を贈与者が与える意思を示し、受贈者が受託することにより成立するため(民法549)、特段、契約書の有無にかかわらず贈与は成立することになります。

そこで相続税法上は、贈与の成立の時期として、下記通達(2)で、「書面によるものについてはその契約の効力が発生した時、書面によらないものについてはその履行の時」と規定しています。

そうなりますと、上記事例では、「書面により贈与契約を実施している場合」は、申告期限から6年を経過していることから時効(相続税法36)を迎えており無税で登記できるでしょうか?

相続税法基本通達逐条解説26頁では、「たとえ、書面が存在していても、~(省略)~長期間登記又は登録を行わない場合など、~(省略)~租税回避その他何らかの目的により、当事者の客観的な真意とは別になされた仮想の行為あるいは贈与の予約とみるのがより自然かつ合理的であるようなものまで、その契約の効力を認めようとするものではない」としています。

過去の、裁判事例でも本通達について、「目的物の特定を欠く契約の場合には、契約の効力発生の時に所有権の移転があったものとはいうことができない」として、未登記のものについて贈与の時効を認めなかった事案があります(東京高裁S59.3.28判決)(相続税法基本通達築城解釈27頁より)。

他方、「書面によらない贈与」については、民法上は、すでに履行した部分を除きいつでも契約解除することが出来る(民法550)ことから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということができないため、登記等が完了して任意に取り消されることがなくなることをもって贈与の時期と規定しています。

ただし、本規定は原則的な「贈与の時期」の取り扱いを規定しているに過ぎないことから、最終的には、贈与により受贈者が実質支配していることが外形的にも客観的にも考察しうる状況にあるかが重要になってくるものと思われます。

1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(昭38直審(資)4、昭57直資2-177、平15課資2-1、平17課資2-4改正)

(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)

(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時

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