オリオン税理士法人
雑記

新型コロナウイルス後遺症の労災取扱いについて


 新型コロナウイルスに関するあらゆる制限が徐々に緩和し始め

少しずつではあるものの「コロナもだいぶ落ち着いてきたな」と感じられるようになってきました。

その一方で、コロナの後遺症ともいえる諸症状に長期間苦しむ方も依然として多くいらっしゃいます。

また、感染と後遺症の発症の間に時間差があると、過去の業務にさかのぼった因果関係の確認が難しく

勤務先や医師の協力が得られず申請を諦めてしまうケースもあるようです。


こうした状況を受け、厚生労働省は令和4年5月12日付で

新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いに関わる新たな通達を発出しました。

従来から職場で新型コロナウイルスに感染した場合

業務によって感染した(業務起因性と業務遂行性)と認められば労災保険の給付対象となり

後遺症もその対象としていましたが、今回の通達を受け、後遺症の労災補償における取扱いが明確になりました。

具体的な取扱い

(1)療養補償給付

医師により療養が必要と認められる以下の場合については

コロナウイルス感染症の罹患後症状(後遺症)として、療養補償給付の対象となる。

ア 診療の手引きに記載されている症状※に対する療養(感染後ある程度の期間の経過後に出現した症状も含む)

※疲労感・倦怠感や咳、息切れ、記憶障害、集中力低下、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害など

参考:診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000935259.pdf

イ 上記アの症状以外で、コロナウイルス感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)に対する療養

ウ コロナウィルス感染症の合併症に対する療養

(2)休業補償給付

罹患後症状(後遺症)により、休業の必要性が医師から認められる場合は、休業補償給付の対象となる。

なお、症状は数か月以上続く場合や、一旦症状が消失した後に再度出現することもあり

職場復帰の時期や勤務時間等の調整が必要となる場合もあることに留意する。

(3)障害補償給付

十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状が固定したと判断され

後遺障害が残る場合は、療養補償給付は終了し、障害補償給付の対象となる。

(4)相談等における対応

罹患後症状の労災保険給付に関する相談等があった場合には

労災保険給付の対象とならないと誤解されるような対応は行わないよう徹底すること。

(5)周知

罹患後症状についても労災保険給付の対象となることについて周知すること。

療養補償給付がされると、労災指定病院等で自己負担なしで治療が受けられます。

療養補償給付を受けながら休業が必要な場合は、休業補償給付の対象となり

休業4日目から特別支給金と併せて賃金の80%が補償されます。

また、労働基準法では業務上の負傷・疾病で療養をしている間は、労働者を解雇してはならないと定めています。

新型コロナウイルス後遺症についても労災と認定されれば、当然に解雇制限が適用されます。

これらの発症の仕方は様々です。コロナの感染性が消失した後から持続するケース

一旦落ち着いたように見えても再発するケース、罹患後症状が変化するケース等があることに加え

現時点ではこれらが永続する症状か否かも明らかではありません。

長期化して仕事を年単位で休むことになった場合には労災認定の有無が生活を左右しかねません。

今回の通達で後遺症がある場合にも安心して治療に取り組める環境整備が行われたことは大きな前進だと思います。

t.w

お使いのブラウザーはこのサイトの表示に対応していません。より安全な最新のブラウザーをご利用ください。