先日、京セラの創業者である稲盛和夫氏が90歳でご逝去されました。
稲盛氏の功績は私が言うまでもございませんが、
京セラの創業者であり、KDDIの誕生やJALの再建など数多くの
功績があり、また盛和塾を通じて多くの経営者に影響を与えました。
松下幸之助氏が昭和の経営の神様なら、
稲盛和夫氏は平成の経営の神様と称されています。
そんな二人のエピソードが、稲盛和夫氏が書いた「生き方(サンマーク出版)」にあります。
まだ、稲盛氏が創業して間もないころ、
現在ほど神格化される以前の松下氏のセミナーに参加したことがあったそうです。
その当時、松下氏が
「ダム経営(ピンチの時に備えるため、蓄え余裕のある経営を実践すること)」の大切さを説いたところ
会場にいる参加者らは、そもそもダムの貯水のような余裕を作り出す方法を教えてほしいのだ、と
セミナー終了後に「そのダムをつくる方法を教えてください」と質問したそうです。
これに対して、松下氏はポツリと、
「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけども、ダムをつくろうと思わんとあきまへんなあ」
と言ったそうで、会場には失笑や失望が起きたそうです。
ただ、この言葉に、稲盛氏は体に電流が走るような大きな衝撃を受けたそうです。
ダムをつくる方法は人それぞれだから、こうしろと一律に教えられるものではない、
ただ、ダムをつくろうとする姿勢がすべての始まりである。
そんな真理をつきつけられたと感じたそうです。
禅問答にも似たこの会話の中で
共鳴しあう二人のカリスマに、私もゾクッとさせられます。
誰しも、経営には正解という答えを持ち合わせているわけではない、
答えを導きだそうとしていく過程にこそ真理がある、、、
二人のカリスマが、そんなメッセージを伝えているようで、
実に深いエピソードです。
稲盛和夫様のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
水品