近年日本では、老後資金の問題から「貯蓄から投資へ」の意識が高まりつつあります。
2019年に金融庁の報告書より「老後2,000万円問題」という言葉が生まれたことが、
その意識を後押ししているようにも思えます。
そのような国民の意識もあってか、現在では数多くの投資商品が登場してきています。
今回は投資商品の一つである投資一任口座(いわゆるラップ口座)の税務について記載いたしました。
1.ラップ口座とは
顧客が証券会社などの投資顧問業者と投資一任契約を結び、
その投資一任契約に従って資産運用するための専用口座をいいます。
2.投資一任契約とは
投資顧問業者が顧客から投資判断の全部または一部の一任をされるとともに、
その投資判断に基づいて顧客のための投資を行なうのに必要な権限の委任を受ける契約をいいます。
3.所得税法上の取り扱い
上場株式等の譲渡により生ずる所得は、他の所得と区分をし、事業所得、譲渡所得、雑所得のいずれかの
所得として分離課税が適用されます。その判断については、有価証券の譲渡が営利を目的として継続的
に行われているかどうかにより判断がされます。(所基通23~35共-11)
営利を目的として継続的に行われているかどうかの判断については、上場株式等においては所有期間が
1年以下である場合には、営利を目的として継続的に行われていると判断がされ、そのように判断がされ
た場合は事業所得又は雑所得に該当することになります。(措通の37の10・37の11共-2)
投資一任契約においては、下記のア及びイの条件で上場株式の売買が行われます。
ア、原則所有期間1年以下で、ラップ口座内の上場株式の売買を行う。
イ、顧客側が証券会社に報酬を支払って、営利を目的として継続的に上場株式の売買を行う。
したがって、ラップ口座内で生じた所得は、事業所得又は雑所得に当たります。
4.相続財産となったとき
ラップ口座を所有していた方が亡くなった場合は、ラップ口座内の上場株式が強制的に換金されます。
このとき、ラップ口座内の資産を承継した相続人は確定申告をすることが必要となりますが、上記3より、
事業所得又は雑所得に該当することから、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用はできま
せん。
こちらの特例は譲渡所得のみに適用がある特例のためです。
なお、ラップ口座内の上場株式が相続により換金されたときの所得が、
被相続人に帰属する見解もあるため、上記は著者の個人的な見解であることをお断り申し上げます。
参考:投資一任口座(ラップ口座)における株取引の所得区分
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
y.s