制度の概要
国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。現在、全国で約153万人*の方が加入されています。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。将来に備えつつ、契約者の方がさまざまなメリットを受けられる、今日からおトクな制度です。
*2021年3月現在
小規模企業共済のおトクな3つのポイント
ポイント1 掛金は加入後も増減可能、全額が所得控除
月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
ポイント2 共済金の受取りは一括・分割どちらも可能
共済金は、退職・廃業時に受け取り可能。満期や満額はありません。共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。一括受取りの場合は退職所得扱いに、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。
ポイント3 低金利の貸付制度を利用できる
契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度をご利用いただけます。低金利で、即日貸付けも可能です。
制度の概要とメリットについては中小企業基盤整備機構に記載の上記の通りです。
手元資金に余裕がある場合は加入のメリットがかなりある良い制度と思われます。
加入資格については下記の通りです。
加入資格
小規模企業共済制度には、次のいずれかに該当する場合にご加入いただけます。
・建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
・商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
・事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
・常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
・常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
・上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
さらに細かい条件もありますが、ここでは割愛して、給与所得(役員報酬を除く)+不動産所得のある所謂「サラリーマン大家」に焦点を当てて書きたいと思います。
上記加入資格の適用除外としてサイトにはこのような記述があります。
加入資格がない例
アパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)
これだけ見ると他の者と雇用契約を結び給与所得がある人が、不動産所得もある場合には加入資格は無いように見受けられます。
しかし、実際にはもっと細かく曖昧な要件が潜んでいますが、サイト上では一切触れていません。
まず、
①「法人または個人事業主と常時雇用関係にある」とは、法人または個人事業主から給与収入を得ており、法人の役員と個人事業の共同経営者を除きます。いわゆる従業員です。
そして、健康保険・厚生年金・雇用保険の被保険者である従業員は加入資格がありません。
しかし、健康保険・厚生年金・雇用保険の被保険者ではない、例えばパートやアルバイト等で、かつ国民健康保険の被保険者は加入資格が得られます。
またこれらの条件を満たしても100%加入資格が得られるというわけではなく、申し込みの時点で審査担当にはじかれる可能性もあります。
つまり、「常時雇用」の定義が極めて曖昧で申込してみないと分からない、という何とも煮え切らないものであるようです。
基本的には国民健康保険の被保険者は加入資格があるとの回答を得ましたが、加入を保証するものではありません。
次に、
②「アパート経営等の事業を兼業」とは、不動産所得につき事業的規模で貸付けを行っていることを指します。事業的規模とは下記の通りです。
国税庁より
不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
これに加えて駐車場のみを賃貸している場合には、50台分以上貸していることも条件の一つとなります。
一般的には貸間2室=1棟、貸駐車場5台=1室で換算し、すべて合わせて5棟以上が事業的規模に該当する、とみなされています。
ただこちらも明文化されているわけではないので、実務上の慣習によるところではあります。
加入の時点で確定申告書の控えを窓口に提出するため、こちらの判断も審査担当によるとのことです。
なんとも曖昧ですね。
ただ基本的には不動産所得につき確定申告により65万円控除または55万円控除の適用を受けている場合は加入資格がある、とのことです。
ざっくばらんに言うと、「事業的規模で不動産を貸付けて収入を得ており、かつパートやアルバイトで給与収入を得ている国民健康保険の被保険者であり、かつ雇用保険の被保険者でない人」であれば加入資格が得られる可能性が高いと言えそうです。
主に不動産所得で生計を立てており、週に20時間未満のパートをしているような人でしょうか。
一般にイメージする「サラリーマン大家」とは異なりますが、対象となる人は限られそうです。
上記の通りこの条件なら絶対に加入できるとは言い切れませんので、加入をお考えの方は事前に機構に問い合わせた方がよさそうです。
また加入資格については一度審査が通った後は、その後その加入資格を失ったとしても遡って資格停止等はされません。
例えば事業的規模の不動産所得ありとして加入→その後不動産を全部譲渡して不動産収入ゼロになったとしても掛金を払い続けることができます。
ちなみにその不動産譲渡後に解約し、再度加入しようと思ったら再度加入審査が必要になります。
これもどうなのかなと個人的には思いますが制度上の決まりらしいです。
ご参考までに。
(小林)