(1) はじめに
従業員やその家族の生活や健康の安定や向上、よりよい労働環境を提供することを目的に様々な福利厚生制度を設けている会社も多いと思います。
しかしながら、会社が従業員のために行った支出はすべて福利厚生費になるわけではありません。
過度に手厚い福利厚生は、給与を支給した上で給与の中からそのサービスを受けたものとみなされ、給与課税の対象となります。
(2) 福利厚生として認められる場合
福利厚生費が非課税となる要件は大きくは4つです。
① 前提として、福利厚生の目的に沿う内容であること
② 全従業員が平等に受けられる福利厚生にかかる費用であること
③ 福利厚生として常識的な内容及び金額であること
④ 税務上の規定がある場合にはその範囲内の支出であること
(3) 福利厚生制度として認められない場合
福利厚生費に相当するものを支出する場合は、特定の条件を満たしていないと、給与とみなされ、所得税や住民税が追加で課される可能性があるので注意が必要です。
福利厚生費が給与課税の対象になる場合とは以下のようなケースです。
① 健康診断費用
会社が直接病院に健康診断費用を支払う場合は非課税の対象ですが、従業員に現金を支給して、従業員の手から病院に健康診断の費用を払う場合には課税対象になります。
また、あまりにも高額な健康診断費用や役職によって診断内容が過度に異なる場合には、福利厚生費として認められません。
② 社宅家賃
社宅や寮を従業員に貸与する場合は、社宅や寮の家賃の50%以上を従業員から徴収する場合には企業負担分は福利厚生費となります。一方、企業負担が50%以上の場合は、企業負担額は給与として課税対象になります。
③ 従業員への食事支給・手当・補助
従業員に現物支給する食事は、以下の要件を満たす必要があります。
イ 従業員が食事代金の半額以上を負担していること
ロ 企業側負担が、一人あたり月額3,500円(税抜)以下であること
ハ 残業や深夜勤務従業員に対する食事の現物支給であること
現金支給の食事に限らず、食事補助券を支給する場合にも、上記の要件を満たす場合には、非課税扱いとなります。
(4) おわりに
上記はほんの一例で従業員への表彰や社員旅行などについても様々な制約があります。給与課税されて、従業員が「これならいらなかったのに」と思われてしまうと企業・従業員双方にとって不幸な結果になりますので、導入は慎重にご検討下さい。
(HIPON)