オリオン税理士法人
相続税

ジョイント口座と相続


(1) はじめに

海外の銀行には、2名以上で1つの銀行口座を共同所有する「ジョイント口座」という制度があります。ジョイント口座は夫婦・家族に限らず、友人や知人同士でも開設が可能です。

ジョイント口座の特徴として、共同名義者1名のみの署名で自由に入出金が可能です。

また、共同名義者に相続が起きた場合、生存者権利取得口座にしておくと、残された名義人に口座が引き継ぐことができます。

これにより、一方が亡くなった場合は、その口座は残された名義人のものとなり、相続の問題が発生したり、口座が凍結されたりすることもありません。

(2) 民法上の取扱い

ハワイ州の銀行で開設されたジョイント口座が、被相続人の相続財産に含まれるかを争った裁判があり、平成26年11月20日に東京高裁から出された判決で、ジョイント口座の財産は、「私法上の相続財産に該当しない」という判断が下されました。

簡単に説明すると、個別の財産が「相続の対象」となるかは、その財産の権利関係を取り扱う法律(今回はジョイント口座のあったハワイ州法)に基づき判断すべきであり、ハワイ州法上、ジョイント口座は共同名義人の一人の死亡により、自動的に生存名義人がその財産を所有することになり、死亡名義人の遺産を構成しないことが明示されているため、相続財産を構成しないと結論付けました。

※あくまでも当時ハワイ州で作ったジョイント口座の取り扱いになります。

 口座を作ることをご検討の際には現地法を十分にご確認下さい。

(3) 相続税法上の取扱い

ジョイント口座は「相続の対象」とはなりませんが「相続税の対象」とはなります。

相続税法上、相続発生日時点でのジョイント口座の残高×口座に資金を拠出した割合に対して、日本の相続税が課されます。

(4) 贈与税法上の取扱い

生前にジョイント口座から贈与税の基礎控除相当額以上(110万円/年)の出金が行われた場合には課税されます。ただし、例えば、夫の収入がジョイント口座に入金され、妻が通常の生活費を出金しているような場合には、贈与税はかかりません。

妻がジョイント口座から出金して高額な買い物をした場合や、ジョイント口座から妻名義の銀行口座へ資金移動したような場合に贈与税が課税される可能性が高いです。

(5) おわりに

この制度を使えば、ある種合法的に愛人に相続財産を残すことも可能です。

弊社のお客様ではないですが、愛人とジョイント口座を作った方の相続を担当した税理士がおりました。その税理士曰く、財産が大幅に目減りしたり、相続税は連帯納付義務があるため、連絡の取れない愛人分の相続税も相続人が負担する羽目になったりしたため、残された相続人は非常に憤慨したそうで、その税理士は二度と関わりたくないと言っておりました。

面白い制度だと思いますが、くれぐれも家族関係が破綻しないよう気を付けてご利用ください。

(HIPON)

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