(1) はじめに
役員が会社のお金を引き出すと、役員への「貸付金」として処理します。
経費の精算などのために現金を引き出すことはよくありますが、会社が役員にお金を貸している状態が長期間や高額であると「認定利息課税」をされる可能性があります。
認定利息課税とは、役員が会社のお金を自由に引き出して使ってしまうのを防ぐための制度で、過度な預金の引き出しがあった場合、役員への貸付と認定して、貸付に対する利息を取ったものとして法人税を支払うこととなります。
利率は定期的に見直しが行われ、令和2年は年1.6%の課税が求められます。
(2) 未収入の認定利息にも認定利息が課されるか
役員貸付が増加する事業者は資金繰りに困っていることが多く、役員貸付の元本や認定利息が年々膨らむ方が少なからずいらっしゃいます。元本はその増加に応じて毎年認定利息が生じますが、支払われなかった認定利息に対しても認定利息課税が必要になるのでしょうか?
この点、国税庁の下記の見解を示し、「未払の認定利息に対する認定利息課税は不要」としています。
1 同族会社の代表者等に対する仮払金(貸付金を含む。以下同じ。)について認定利息を計算することは当然であるが、当該計算に当つては、進んで複利計算によるようなことはしないで、元本である仮払金についてだけ利息を認定することとし、認定利息の集積額については、利息を認定しないものとすること。ただし当該利息を元本に繰り入れた場合または元本についてだけ返済があり、利息について未収のまま放置している場合等特に課税上弊害があると認められるときには、この限りでないこと。
2 代表者等からのもどし入額について、元本である仮払金または未収利息のいずれに充当するかは、会社計算によるものとすること。
熊協420
昭和29年8月6日
国税庁協議団本部長 殿
熊本国税局協議団本部長
(3) まとめ
自身の裁量で自由にお金を動かせる同族会社に対して一定の枷は必要だが、未払の認定利息にまで認定利息を課税するのはやりすぎであると国税庁は考えているようです。
ポイントとして、利息を元本に繰り入れた場合や元本のみ返済し、利息を未収のまま放置している場合には認定利息が課される可能性があるということです。
前者は受取利息の相手勘定を未収収益や未収入金として処理することで防げます。
後者は返済元本がないことには難しいですが、借入返済を元本と未収利息のいずれに充当するかは、会社が決められるので、少しずつでも未収利息を減らすことが肝要です。
(HIPON)