(1) はじめに
役員への賞与は本来法人税法上の費用として認められていませんが、税務署に支給時期や支給金額を事前申請することにより税務上の費用とすることができます。
この制度を「事前確定届出給与」といいます。
事前確定届出給与は法人税の節税効果や役員のモチベーションアップに繋がることや、社会保険料の減額効果もあるため、導入を検討する会社が多くあります。
弊社でも事前確定給与に関するお問い合わせが増えてきましたので、支給時期、支給金額を中心に解説したいと思います。
(2) 支給時期について
事前確定届出給与を期の途中に支払うことは役員報酬の前払いのように見えるため、従業員と同じ支給時期での支出は問題があるのではないかという疑問が湧きます。
しかしながら、事前確定届出給与は株主総会の承認を受ける必要があることや、事前確定届出給与の支給時期は役員の職務執行期間内であればこれを制限する法律はない(使用人兼務役員の使用人分の賞与を除く。)ことから、支給時期に制限はないと解されます。
なお、株主総会の日から1月以内の届出書の提出要件があるだけなので、理論上、届出書の提出日前に支給することも可能(T&A master 305号)のようです。
ただし、「事実の仮装」を疑われる可能性があるので、個人的には届出書提出後に支給された方が無難であると考えます。
(3) 支給額について
事前確定届出給与は一定期間内に役員ごとの支給時期、支給金額を届け出ることが規定されているだけであるため、事前確定届出給与の支給比率を高く、定期同額給与の支給比率を低く設定しても特段問題はないと思われます。
また、役員ごとに支給比率が異なる場合でも損金算入の要件を満たすものと解されます。
ただし、定期同額給与の他に事前確定届出給与を支給する場合、両者を合算した年間所得で過大役員報酬に該当するかどうかの判定を行います。役員報酬の別枠として用意されているわけではないので、まずは適正な支給総額を定め、それを予算配分することが肝要です。
(HIPON)