(1) はじめに
相続が発生して気になることは被相続人に借金があるかどうかでしょう。父母であれば兎も角、叔父、叔母などからの相続の場合、被相続人がどのような財産があるか分からない場合が圧倒的に多いと思います。
場合によっては相続放棄を検討しなければいけませんが、そもそも被相続人に借金があったのかはどのように確認したらいいか?について今回は解説いたします。
(2) 信用情報機関
結論として、信用情報機関に情報開示請求を行えば、各種金融機関(銀行、消費者金融、クレジットカードなど)からの借入情報を把握することができます。
日本には以下の3つの信用情報機関があり、日本の金融機関はそのほとんどがいずれかの機関と提携しています。利用者が滞納等をした場合にはその情報が信用情報機関に登録され、その機関を利用している金融機関に共有される仕組みになっています。
〇 割賦販売法・賃金業法指定信用情報機関(CIC)
〇 株式会社日本信用情報機構(JICC)
〇 一般社団法人全国銀行協会(全銀協)
(3) 手続き方法
申請は各機関のHPから申請書をダウンロードして内容を記載後に郵送するのが一番よいと思います。
書類に不備がなければ一週間程度で完了し、信用情報は手続きした相続人本人の自宅に送られます。
申請に必要な資料は以下の通りです。
① 戸籍謄本(3セット)
② 開示請求する相続人の本人確認資料(身分証など2種類)
③ 1,000円の定額小為替(3枚)
④ 信用情報開示申込書
⑤ 返信用切手
※戸籍謄本は原本返却不可のため、1部取得して法定相続情報を作成する方が便利です。
(4) 注意すべき点
信用情報機関の情報は全能ではありません。
例えば、知人との金銭の貸し借りや未提携の金融機関からの借入については把握することができません。
ただし、信用情報機関に電話確認したところ、一般的な金融機関で信用情報機関と提携していないことは考えづらいようです。
また、開示される借入残高は、開示された時点よりも1~2ヶ月程度過去の時点の残高となるようですが、亡くなる直前に高額な借入をすることは考えづらいでしょうし、借入を行った場合でも自宅に借用書などが残っている可能性が高いでしょう。
(5) 相続放棄の熟慮期間の伸長申請
葬儀が終わってから戸籍の収集、信用情報の開示をするには相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)はあまりにも短すぎます。
そこで相続の熟慮期間を伸長する制度があります。
https://orion-tax.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-2402e0.html
(4)でご紹介した知人や未提携の金融機関からの借入がある場合、3ヶ月を超えて相続放棄が難しくなってから債務請求をされるケースがありますが、熟慮期間の伸長申請をしておけば、このような債務も炙り出すことができて一石二鳥となりますので、併せてご検討下さい。
(HIPON)