(1) はじめに
相続の手法の一つに限定承認というものがあります。これは被相続人の財産を限度として被相続人の債務を相続する方法です。
財産と債務を承継するため財産を現金化して債務を清算する場合には相続放棄を選択する場合と結果は変わらず、限定承認の方が手間もかかります。
よって、限定承認は以下のような理由がある場合に行われるのが一般的です。
① 財産と債務のどちらが多いのかはっきり分からない。
② 被相続人の財産の中にどうしても相続したい財産がある。
例えば、先祖代々の土地や相続人の自宅が建っている底地などを被相続人がお持ちの場合には②の理由で限定承認を希望される方が多いと思います。
(2) 税金の取扱い
① 相続税
財産>債務+基礎控除額(3,000万円+500万円×相続人の数)となる場合には相続税がかかります。
ただし、限定承認が考えられるケースは、財産≦債務となる場合が圧倒的に多いので、生命保険金や退職金などの「みなし相続財産」を何千万円も相続しない限りは相続税は出ないとお考えいただいて差し支えありません。
② 所得税
限定承認をした場合、税務上は被相続人が相続人に時価で財産を売却したとみなされ、所得税がかかります。
例えば、被相続人が5,000万円で購入した不動産(時価6,000万円)を相続した場合、差額の1,000万円に対して所得税がかかります。
なお、将来的に相続人が当該不動産を売却した場合には、取得費は時価の6,000万円となり、二重課税がなされないようになっています。
(3) 準確定申告の期限の留意点
準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
相続放棄の熟慮期間の伸長を行った場合、相続放棄や限定承認をするかどうかの判断は延長することができますが、準確定申告の期限は延長されません。
https://orion-tax.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-2402e0.html
特に都心の不動産をお持ちの場合には取得費と時価の乖離が大きく、高額な譲渡所得税とそれに付随する加算税が生じる可能性があるので、お早めにご検討いただく必要がございます。
(HIPON)