令和3年の税制改正により、経営資源の集約化(M&A)により生産性を高める企業に対して、税金の繰延べ措置ができました。
【内容】
措置の内容としては、M&Aにより株式を購入した場合に、取得価額(10億円以下)として資産計上した金額のうち、70%以下の金額を準備金(中小企業事業再編投資損失準備金)として積み立てた場合、当該金額について損金算入が可能となります。簡単に言えば、株式購入額の7割が損金処理可能となります。
また、取得から5年経過した場合には、その後5年間で損金処理した準備金を均等に取崩す(益金処理)ことになります。
なお、当該株式を取得後に外部へ売却した場合や、減損処理した場合などは損金処理した金額の全額または相当分を取崩し(益金処理)する必要があります。
この措置は、企業の後継者不足を背景としてM&Aを推進する動きの中で、またコロナ禍での労働生産性を高めるべく経営資源をM&Aに向ける中小企業に対して、M&A特有の偶発債務や簿外債務等のリスク等に備える観点から設けられました。
【適用期間】
中小企業経営強化法(改正)の施行日(令和3年6月16日)から令和6年3月31日までに経営力向上計画の認定を受けた株式等の取得に対して適用されます。
【適用対象者】
適用対象者は青色申告書を提出する「中小企業者(租税特別措置法上)」で、中小企業経営力向上計画の認定を受けた特定事業者等(改正中小企業経営強化法にて定義)に該当する者です。
【適用手続き】
➀株式譲渡の基本合意等したタイミングで、経営力向上計画を申請し、主務大臣の認定を受ける。
②認定計画に従って株式取得した後、主務大臣に報告書の提出をする(報告には財務・法務DD等の添付が必要となる)。
③税法上の要件を満たす場合は、税務申告において準備金を損金処理し、➀の申請書・認定書、②の報告書の写しを添付して申告する。
【その他】
経営資源集約化税制においては設備投資減税(全額即時償却または設備投資額の10%税額控除)や、所得拡大促進税制(給与総額の増加分について25%税額控除)等も合わせて適用可能となります。
【留意点】
買手も売手も中小企業経営強化法上の特定事業者等に該当する必要があります。
事業譲渡や合併によるM&Aは対象外となり、あくまで株式の取得となります。
事業の承継を伴うことが必要になりますので、実質的に事業の承継と言えないものは除外されます。ただし、「事業」の定義をどのようにしているかは不明のため、資産保有型会社や資産運用型会社が該当するのかどうかは不明です。
同一の者に支配されている法人間(グループ間)での事業の移転は対象外となります。
令和3年の税制改正により、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の制度も廃止され(2021.3.31)、中小企業投資促進税制や本設備投資減税に一本化されています。その点からも、経営力向上計画を申請することから始めると良いかもしれません。
なお、経営力向上計画は、形式要件を満たすことで基本的には認定を受けることは可能です。
Gビズでの申請も可能となり、申請もしやすくなりました。
まずは、経営力向上計画を申請してはいかがでしょうか!
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