令和5年の税制改正により、令和6年1月1日以後の譲渡から「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」の適用が拡大されました。具体的には、今まで売主が行わなければならなかった耐震工事や取り壊し工事を譲渡年の翌年2月15日までに買主が行った場合にも特別控除が適用できるようになりました。
弊社でも買主取り壊しのお客様の代理申請したところ、気になる点がありましたのでご説明いたします。
従来の税制では売主(譲渡所得の申告者)が必ず解体の契約書を保有しており、かつ、不動産の引渡時期は必ず解体後になっているため、形式要件を満たせば必ず適用できる制度でした。
一方、買主取り壊しの場合、売買契約の時点で取り壊す予定という話は聞いていても、具体的な日程や解体業者までは把握されないケースも多いと思います。
今回のお客様は買主と連絡が取れたことや、最終的に買主が建物の滅失登記をしてくれたことから無事申請を終えることができましたが、非協力的な相手であった場合にはゾッとします。
また、近年は人手不足により、工事が予定通り進まないことも多いので、特に年末に駆け込みで売買してしまうと解体が翌年2月15日までに終わらないということも考えられます。
なお、こうしたトラブルを防止する観点から国土交通省は買主の工事完了期日等を定めた本特例に関する特約等の締結を推奨しており、本特約は市区町村に申請する「被相続人居住家屋等確認書」の添付書類としても使えます。
ただし、申請が通っても翌年2月15日までに解体が終わらないと特例は使えません。人手不足で工期が遅れている現在、工期を確約できない中で訴訟リスクを抱える特約を締結してくれる買主がいるのかは甚だ疑問であり、本特例を適用したい場合には駆け込み売却はやはり危険と考えます。
(HIPON)