オリオン税理士法人
相続税

不動産の売買契約後、決済前に亡くなった場合の留意点


不動産の売買契約によっては、契約日から決済日まで期間が空く場合があります。そのような際に、決済日を待たずにお亡くなりになるケースも散見されることから、このような場合の、所得税や相続税の取扱いについて確認したいと思います。

【背景】

母は介護施設に入所することになり、自宅の売買契約を締結しましたが、その後容態が急変し、決済前に亡くなりました。そのため、決済は子(母とは別居)が実施しました。

所得税と相続税の注意点について教えてください。

【ポイント】

不動産譲渡の時期は、原則引渡しがあった日ですが、納税者の選択により契約効力発生日(契約日)も認めれらえています(所基通36-12)

【取扱い】

項目/申告者
居住用家屋の特別控除・軽減税率不可可能
相続税の取得費加算可能
住民税の課税課税される課税されない
譲渡した不動産の相続税評価残代金請求権残代金請求権
所得税の債務控除不可可能
  1. 居住用家屋の特別控除・軽減税率
    • 契約日に譲渡があったとした場合、母の準確定申告として申告することで当該特例の適用が可能となります
  2. 相続税の取得費加算
    • 相続した不動産を売却する場合で一定の要件を満たす場合は、売却した不動産の取得費に相続税の一定額を加算することが出来ます。ただし、母が準確定申告を実施する場合は、当然ながら母の所得として申告するため相続税の取得費加算は適用できません。
  3. 住民税の課税
    • 住民税の納税義務者は、課税の基準日である1月1日に市区町村内に住所のある人のため、母で準確定申告を実施する場合は住民税は課税されません。
  4. 譲渡した不動産の相続税評価
    • 相続開始前に不動産の譲渡契約を締結している場合は、所得税の申告者が子と母の別なく、残代金請求権(未収金)で評価します。頭金を受取っている場合にはその差額が未収金として評価されます。
  5. 所得税の債務控除
    • 母の準確定申告をする場合は、当該所得税は母の相続債務として相続財産から控除することが出来ます。

以上のように、準確定申告することでメリットが大きい場合もありますが、空き家特例が利用できるような場合等には、必ずしも準確定申告の方がメリットが大きいとは限らないため、事前に税理士等の専門家に確認してから手続きしてください。

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