(1) 制度概要
法基通9-5-3では、法人がその支払う配当、給料等に係る源泉徴収所得税を納付しなかった場合には、税務署長は、その所得税を法人から徴収することとされていますが、法人がその徴収された所得税を損金として計上した場合には、その損金に計上した所得税相当額は、配当や給料等の追加支払いとして取り扱うものとしています。
つまり、配当に係る所得税相当額は配当金の支払いとして取り扱われ、損金算入が否認されますが、給料に係る所得税相当額は使用人給料の追加支払いとして損金算入が認められます。
ただし、税務調査で交際費等の支出が私的支出とみなされ、役員賞与扱いとなる場合には、役員賞与の所得税相当額を会社で負担したとしても、定期同額給与の要件を満たさないため、損金算入が否認されるものと思われます。
(2) 求償しない場合の所得税相当額の計算方法及びデメリット
例えば、従業員の給料に1万円(税率10%)の源泉徴収漏れがあり、これを従業員に求償しない場合、給料に係る所得税相当額は手取金額である1万円ではなく、1万円÷(1-0.1)=11,111円と計算され、本来支払うべき所得税よりも1,111円多く納めなくてはなりません。
また、これに応じて従業員側の所得も増えるため、源泉徴収票や法定調書に記載すべき金額も上記を含めた金額となります。
求償しない場合には、納税額だけでなく、書類作成の手間や計算ミスが増える可能性がありますので、交渉できる相手であれば、できる限り求償されるのをお勧めいたします。
(HIPON)