オリオン税理士法人
その他税目

定期借地権及び定期借家権と事業用建物の減価償却


借地借家法には、普通借地権・定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権・一時使用目的の借地権の5種類があります。

今回は、その中の定期借地権・事業用定期借地権に関連する減価償却の取り扱いについて書いてみました。

定期借地権と普通借地権との大きな違いは契約の更新ができるかできないかで定期借地権は更新がない借地契約となります。

定期借地権は定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権の3種類なりそれぞれの違いは下記になります。

・定期借地権
利用目的:限定なし(主に分譲マンション)
存続期間:50年以上
契約方式:公正証書などの書面により契約
返還:更地返還
建物買取請求権:行使しない

・事業用定期借地権
利用目的:事業用建物に限り居住用は不可(主に店舗や商業施設等)
存続期間:10年以上50年未満(10年以上30年未満年以上、30年以上50年未満)
契約方式:公正証書より契約
返還:更地返還
建物買取請求権:行使しない

・建物譲渡特約付借地権
利用目的:限定なし
存続期間:30年以上
契約方式:書面でなくても良い
建物買取:30年以上経過後に建物を買い取ることを約定しているので時価で地主が買取

定期借家権は定められた期間の更新ができない借家契約のことになります。


例えば、ある企業が地主と事業用定期借地権の契約を交わし、その土地の上に建物を建築したとします。
事業用定期借地契約の契約期間は20年とします。土地の上に建てた建物が31年だとしたらこの建物の耐用年数は何年になるか。

事業用借地権を設定した土地の上に建設する建物の耐用年数について、取引等の税務上の取扱い関する事前照会の回答が大阪国税局よりされております。あくまでも大阪国税局としての見解となっておりますが、他の国税局において回答がなされていないので現況は、この事前照会の回答に準じて耐用年数を計算することとなると思われます。

「減価償却資産については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令において、その耐用年数(以下「法定耐用年数」といいます。)が定められています。
また、法人税法施行令第57条《耐用年数の短縮》では、一定の事由に該当する場合に、納税地の所轄国税局長の承認を受けたときは、減価償却資産の使用可能期間を法定耐用年数とみなすことを定めています。
この「一定の事由」については、同条第1項第1号から第6号まで及び法人税法施行規則 第16条第1号から第3号まで《耐用年数の短縮が認められる事由》に掲げられており、いずれも減価償却資産自体の使用可能期間が法定耐用年数よりも著しく短くなるという事由が現に発生しているような場合に限って承認される趣旨であると解されます。
しかしながら、借地契約の契約期間が法定耐用年数より短いことは、法令上のいずれの事由にも該当しないため、同条に基づく短縮の承認申請は認められません。」

よって、事業用定期借地権の契約期間が建物の耐用年数より短い場合においては、事業用定期借地契約の契約期間20年での耐用年数での償却は認められず、31年で償却となり20年目で未償却残高を固定資産除却損で計上することとなります。

では、定期借家権の契約の場合はどうなるでしょうか。

例えば、ある企業が定期借家権の契約を交わし、内装工事をしたとします。仮に内装工事の耐用年数が10年~15年で定期借家権の契約期間を5年とします。この場合の建物等の耐用年数は何年になるか。

タックスアンサーNo.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数より
「法人が建物を賃借し、その建物に造作した場合には、自己が所有している建物に対して行った資本的支出とは異なりその造作を一の資産として、その造作した建物の耐用年数およびその造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に耐用年数を見積もることとされています。
また、建物附属設備に造作した場合には、その建物附属設備の耐用年数により、その造作を償却します。
ただし、その造作した建物について賃借期間の定めがあり、その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができないものについては、その賃借期間を耐用年数として、これらの造作を償却することができます。

なお、同一の建物についてされた造作は、そのすべてをまとめて一の資産として償却をしますから、その耐用年数は、造作の種類別に見積もるのではなく、その造作全部を一の資産として総合して見積もることになります。」

定期借家権の契約で要件が満たされていれば、通常の耐用年数でなく賃借期間を耐用年数として償却できるということになります。

定期借地権と定期借家権で異なる耐用年数の取り扱いになるので注意しましょう!

ビッキー

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