・概要
詐欺などの犯罪で得た資金のマネーロンダリングやテロ資金供与を未然に防ぐために、国際的な協調のもとに資金面から犯罪行為を撲滅するために制定されました。(通称:犯罪収益移転防止法)
平成20年3月1日に施行され、令和4年12月まで複数回改正されており、最新の改正は令和6年6月までに全面施行予定となっています。
<警察庁>
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20230601.pdf
・特定事業者および対象取引等
犯罪収益移転防止法の対象事業者(特定事業者)は顧客との取引の際に確認を行うなど、一定の義務が課されています。
以前はマネーロンダリング等を未然に防ぐ取り組みは主に金融機関での本人確認が該当していましたが、近年では不動産売買や弁護士に資金保管を依頼するなどマネーロンダリング等の手口が巧妙化していることから、法改正により本人確認等を行う事業者および対象取引が増え続けています。
税理士または税理士法人も特定事業者に該当するため、義務の対象となる業務(特定業務)のうち一定の取引(特定取引等)に対して下記の義務が課せられています。
⑴特定業務のうち特定取引等
①宅地または建物の売買に関する行為または手続き
例:顧客を代理して不動産の売買を行うこと
②会社の設立または合併に関する行為または手続き、その他の政令で定める法人の組織、運営または
管理に関する行為または手続き
例:顧客である会社等の設立、組織変更、定款の変更、取締役の選任等の手続きを行うこと、合併比率
算定書を作成すること
③200万円を超える現金、預金、有価証券、その他の財産の管理または処分
例:顧客の相続財産を管理すること
⑵特定事業者の義務
①取引時確認(顧客の本人確認等)
②確認記録の作成・保存(本人確認等を行った記録の作成)
③取引記録の作成・保存(特定業務を行った記録の作成)
⑶違反した場合
服すべき規定に違反していると認めるときは、財務大臣が是正を命ずることができるとされています。
是正命令に違反したときは、罰則(二年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金)が適用されます。
・個人に対する影響
上記のとおりマネーロンダリング等を未然に防ぐという建付けの法律ですが、日常生活で金融機関を利用する個人にも影響があります。金融機関によっては口座開設時のみならず定期的にその口座の利用目的等や本人確認書類を提出をしなければならないため、非常に面倒です。その金融機関からの書類を提出しない場合は口座取引停止となる場合もあるようです。(現在は金融機関の判断による)
協力しないことのみによって日常生活に支障が出るのであればどちらが悪なのか分からなくなりますが、バランスが難しいところではあると思われます。
(小林)