オリオン税理士法人
その他税目

税金を滞納して私的整理することは可能か?


会社を清算するには、私的整理と法的整理がありますが、滞留国税がある中で私的整理することが可能かどうか?検討してみたいと思います。

まず、私的整理とは裁判所を通さずに会社を清算することなどを言い、法的整理とは裁判所をとおして民事再生、会社更生、破産などの、いわゆる法的倒産手続を経る清算手続きを言います。

基本的に、私的整理する場合は、資産から債務を返済して、残余財産がある場合には株主へ配当して清算結了となります。

債務超過の場合であっても、外部債権者への返済をすべて終えてオーナー社長が会社に貸付けした債権のみとなれば当該債権を放棄して資産・債務のバランスをゼロにすることで清算結了することが可能となります。

それでは、冒頭に示したように、滞留した国税がある状況で私的整理により清算した場合はどのような取り扱いになるでしょうか?

清算する場合は、基本的には官報へ公告し、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません(会社法499①)。また、公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記することになり、除斥された債権者は不利益な取り扱いを受けることになります(会社法499②)。ただし、当該規定は国税については適用されないことから催告期間経過後に国税が滞納税額を通知したとしても除斥されることはありません(徴基通34-12)。

また、国税を完納しないで清算結了の登記をしても、当該株式会社等は国税の納税義務を負うことになり、清算人等が二次的納税義務を負うことになります(徴基通34-13)。

二次的納税義務者は、残余財産の分配を行った清算人(通常は、会社の代表取締役等が就任する)や残余財産の分配を受けた株主等となりますが、納税義務の範囲については、清算人であれば分配した財産の額を範囲として、株主等であれば分配を受けた財産の価額を限度に負えばよいことになります。

であれば、最終配当を株主等に実施しなければ清算人も株主等も二次的納税義務を負う必要がなくなることから、国税債務を残したうえで私的整理する方が経済性(手続費用)や迅速性の面でも優れていることから選択されるものと考えます。

しかしながら、国税だけを滞納し私的整理をする場合、優先的に他の債権者へ返済する詐害行為や、あるいは意図的に役員やその親族等に無償譲渡や低額譲渡、報酬を過大に支給した上で私的整理することも可能となることから、適正性や公平性の面で限界があると言えます(通42.民424.徴基通32-31)。

したがって、現実的には国税を滞納したうえでの私的整理は困難が伴うものと思われます。

このような状況になった場合には、国税や裁判所等に確認したうえで、慎重に手続きをする必要があるものと思われます。

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